わたしの名は紅 オルハン・パムク 和久井路子訳 藤原書店

発行年:2006年第6刷

出版社:藤原書店

状態:【並み】お読みいただく分には問題ありません

詳細:帯あり カバー表紙まわりごくわずかなヨレあり 本文は使用感少なくきれいな状態です ハードカバー四六判

十六世紀末のイスタンブル
舞台は1591年の冬、オスマン・トルコ帝国の都イスタンブルでの雪の九日間の出来事である。帝国は十六世紀前半に政治的にも、経済的にも、文化的にも最高の円熟期に達したあとで、色々な面でそろそろ問題が出てき始めた時期である。政治的な腐敗、長く続く泥沼化した戦争、物価高、インフレに悩む市民、疫病の流行、大火、退廃的な風潮、乱れた世相と、これら全ての悪の根源は預言者の言葉にそむいたためであり、葡萄酒の売買を許したためであり、宗教に音楽を取り入れたためであり、異教徒に寛大であったためであったといって、この機会を利用して市民の間に入り込み,広がりつつあるイスラム原理主義者の動きがある。敗北を知らなかったトルコ軍はこの少し前、レパントの海戦(1571)でヴェネツィア共和国とスペイン王国のキリスト教連合艦隊に初めて敗北を喫して、西洋の力に対する畏れを身をもって感じ始めた時期でもある。この時期はまたトルコの細密画の技術が、その庇護者十二代スルタン・ムラト三世の下で本家のペルシアの芸術を凌駕する域に達した時代でもある。
 時のスルタン、ムラト三世は翌年がイスラム暦の一千年目に当たるところから、その在位と帝国の偉容を誇示するための祝賀本の作成を秘かに命じる。元高官で細密画がわかるエニシテが監督するが、彼はかつてヴェネツィアで見た遠近法や陰影,肖像画などの手法を取り込むことをもくろむ。西洋画の技法で細密画を描くこと、特に肖像画はアラーの神への冒 行為と考えられる時代である。物語はやがて殺人事件に発展していく。事件はイスタンブルで起こるが、細密画にまつわる歴史的解説は、アレキサンダー、ダリウス、ジンギスカンの蒙古、フラグの西アジア、チムールの中央アジア、コーカサス、古代ペルシア、ササン朝ペルシア、インドにまで及ぶ広大な展開を示す。この本は、その中で西の文明に対比するものとしてイスラムの概念がでてくるが、イスラム原理主義者の西の影響をよせつけようとしない暴力と独断を、強く糾弾する書である。進歩的なモスレムの知識人たちと共に、著者はこういう野蛮と独断がイスラムを内から破壊し、自己批判や変化をおそれることがモスレム社会を後進させるという。変化をおそれず、西の文明を、よいものは選び受け入れることによってこの危機を乗り越えられるという。
型番 B170608
販売価格 1,000円(内税)
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